2012年2月29日水曜日

和民元店長が経験した修羅場

居酒屋チェーン「和民」を展開するワタミフードサービスの居酒屋に勤めていた森美菜さん(当時26)が08年6月、入社2カ月で飛び降り自殺した問題で、神奈川労災補償保険審査官は労災適用を認める決定を下した。森さんが「業務による心理的負荷が主因となって精神障害を発病した」と認定、業務と自殺の因果関係を認めたのだ。

「森さんが受けた苦しみは痛いほどよくわかる。精神的に追い詰められたんだと思います」

 こう語るのは、森さんと同期入社という元店長の男性である。

「森さんの時間外労働は月140時間にも上っていたと報じられていましたが、私も同じようなもの。寝てる時間があったら仕事しろという会社ですから」

 この元店長の時間外労働は、月300時間以上になることもあったという。

「休日も早朝から研修会やレポート提出があり、休む時間がありませんでした。仕事と会議で、寝ないで丸2日続けて働くことも。夜勤明けで渡邉美樹会長の講話へ行って、そのまま寝ないで出勤したこともある。それが肉体的にも精神的にもボディーブローのようにきいてくるんです。レジの下で倒れて寝てしまったこともありました」

 和民では、人件費のコントロールを売り上げ目標に比例して行っていたという。

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「決められた人件費を超えると怒られるし、売り上げが少ない日もあるから、従業員は自分のタイムカードを改竄し、過少申告していました。タイムカードは、パソコンで管理しているんですが、店長だけが知るパスワードをみんなに教えてましたから、改竄は簡単にできました」

 元店長の給与明細によると、残業に次ぐ残業で働いたにもかかわらず時間外労働は30時間、支給額は手取りで16万円。ボーナスもなく、寸志で1万円程度だったという。

「渡邉美樹会長の新刊本の購入費が給与から天引きされていました。著書の読書感想文も提出しないと昇進できないから、買わざるを得なかった。給与明細の封筒には渡邉美樹会長の書いた文書が入っていて、その感想も毎月提出しないといけなかった。会社で着るブレザー代やグループのボランティア団体への寄付も天引きされていました」

 長時間労働でこんな体験もしたという。

「毎日帰れず、家族との時間も作れない。夫婦生活もできませんでした。お店で寝泊まりするので、お風呂に入らないと不潔じゃないですか。帰れない者は、厨房にある、皿などを水につけておくための大きなシンクに入り、ホースを使って、シャワーのように体を洗っていました。普通にやってましたよ」

 こうした元店長の話について、ワタミ側はこう回答する。

「質問には、元店長のものという証言がいくつか挙げられていますが、『元店長』とはどこのどなたでしょうか? 出所不明な情報をもとにしたご質問についてはお答えいたしかねます」(広報グループ)

 元店長のような待遇が全社的なら、大問題である。

(週刊朝日 2012年03月09日号より)

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